人権

Ⅰ. 考え方・方針・体制

1. 基本方針

味の素グループは、ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)を通じたサステナブルな成長を実現し、SDGs等の環境・社会・ガバナンスに関する国際的なコンセンサス達成のためにイニシアティブを発揮していくにあたって、全ての事業活動が人権尊重を前提に成り立っているものであることを認識しています。「世界人権宣言」「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言とそのフォローアップ」「国連グローバル・コンパクト」を含めた国際的な人権基準を支持するとともに、味の素グループポリシーの一つとして「人権尊重に関するグループポリシー」を定めています。本ポリシーは、「国連ビジネスと人権に関する指導原則(以下、UNGPs)」に基づき、グローバルに事業を展開する企業グループとして、味の素グループ各社およびその役職員が国際的に認められた人権を尊重し、活動を行う国の国際的人権義務、ならびに関連する法令の順守を徹底すべく定めるものです。また、味の素グループのビジネスパートナーおよびそのほかの関係者(上流サプライヤーを含む)に対し、本ポリシーを支持し、人権の尊重に努めていただくよう働きかけ、協働して人権尊重を推進します。

味の素グループポリシーは取締役会・経営会議における承認を経て代表執行役社長により署名されています。

味の素グループ 人権に関する重点課題
※「人権尊重に関するグループポリシー」より抜粋

  1. 差別の排除
    味の素グループは、人種、民族、国籍、宗教、信条、出身地、性別、年齢、障がいの有無、LGBT等の理由による差別を行わず、ハラスメント等個人の尊厳を傷つける行為を行いません。
  2. 児童労働、強制労働の禁止
    味の素グループは、児童労働、強制労働、奴隷労働、および人身売買による労働を一切認めません。
  3. 労働基本権の尊重
    味の素グループは、結社の自由、ならびに労働者の団結権および団体交渉権をはじめとする労働基本権を尊重します。
  4. 適切な賃金支払いおよび労働時間の管理
    味の素グループは、賃金支払いや労働時間の管理を適切に行います。
  5. 安全な職場環境の確保と健康増進の支援
    味の素グループは、安全かつ衛生的で快適な職場環境を確保し、世界で働く一人ひとりの健康づくりの支援に努めます。
  6. ワークライフバランス実現の支援
    味の素グループは、世界で働く一人ひとりのワークライフバランスの重要性を理解し、その実現の支援に努めます。
  7. ダイバーシティの向上や包摂的な社会づくりへの貢献
    味の素グループは、世界で働く一人ひとりが、人種・国籍・性別などを問わず成長して活躍できるよう、人財の属性や価値観の多様性を尊重し、ダイバーシティの向上に努めます。また、障がい者、外国人労働者やLGBT等、社会からの疎外や人権侵害を受けやすい脆弱な人々の人権を尊重し、それらの人々の自立支援や救済等に取り組みます。
  8. 個人情報の適正な取扱い
    味の素グループは、個人情報の保護に関する法律および関係する法令を順守し、個人情報の適正な取り扱いに努めます。

2. 推進体制

味の素グループは、サプライチェーンにおける人権尊重を含めたESG・サステナビリティに関する取り組みを、取締役会の監督のもと、経営会議の下部機構であるサステナビリティ委員会と経営リスク委員会を中心に推進しています。サプライチェーンにおける人権尊重の取り組みに関するロードマップ策定、事業計画へのサステナビリティ視点での提言と支援をサステナビリティ委員会およびサステナビリティ推進部で行い、経営会議および取締役会に報告します。また、取締役会・経営会議、サステナビリティ諮問会議・委員会では、人権テーマに関する議論を適宜行っています。

※ 味の素グループ内の人権課題については企業行動委員会およびその下部機関である人権専門委員会を中心に取り組みを推進しています。

ESG・サステナビリティに関する体制
人権テーマに関する議論
実施日 会議体 議題
2023年2月2日 サステナビリティ委員会
  • 人権に関するサプライヤー・製造委託先管理の展開
  • インドネシア/ベトナム人権影響評価プラン
2023年4月27日 サステナビリティ委員会 インドネシア/ベトナム人権影響評価結果
2023年9月25日 経営会議 サステナビリティ情報開示(CSRD)に関する勉強会

※人権視点含む

2023年10月5日 サステナビリティ委員会
  • 人権に関する取引先管理展開 リスクおよび対応状況について
  • 人権リテラシー(e-ラーニング)実施計画

Ⅱ. 人権デュー・ディリジェンス

1. 味の素グループにおける人権デュー・ディリジェンス

味の素グループは、UNGPsや人権尊重に関するグループポリシー等に基づき、人権に関する専門家である第三者機関をはじめとする各ステークホルダーと対話・協議を行いながら、味の素グループのビジネスに関わるバリューチェーン全体における全てのステークホルダー(全従業員、取引先、ビジネスパートナー、地域社会の人々、お客様等)の人権尊重の実践に取り組んでいます。全事業の原材料調達、生産、販売に関する国別人権リスク評価を定期的(4年ごと:2014年、2018年、2022年)に実施し、これを起点に人権デュー・ディリジェンスプロセスを推進しています。

※ 経済人コー円卓会議日本委員会(CRT)、一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)

2. 基本的な考え方

UNGPsに基づくバリューチェーン全体にわたるマネジメント体制を構築するにあたり、ライツホルダーとの対話を最も大切にしながら、以下の「深掘性」「網羅性」の二軸を中心とした取り組みを進めています。主に「深掘性」におけるライツホルダーとの直接対話を中心に取り組み、「網羅性」は「深掘性」の取り組みを補完し、そこで拾いきれないリスクを網羅的に抽出・把握することを目的としています。これらの取り組みによりバリューチェーンにおける人権リスクを最小化していきます。

  • 深掘性:
    ライツホルダーとの直接対話を通じて、人権課題の抽出および抽出した課題へ迅速に対処できるマネジメント体制を構築します。
  • 網羅性:
    サプライヤーをはじめとする取引先各社との連携強化は不可欠であり、「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」に基づいた独自の質問票を活用し人権リスクの抽出を行い、対話を通して改善を支援します。
味の素グループの人権デュー・ディリジェンスプロセス
これまでの歩み
年度 味の素グループの取り組み
2021
  • サステナビリティ諮問会議およびサステナビリティ委員会設置

    ※サステナビリティ委員会傘下のサステナブル調達タスクチーム内に人権分科会設置

  • ブラジルにおける人権影響評価実施(サトウキビ糖蜜、コーヒー豆産業のサプライチェーンのリモートインタビュー調査)、報告書開示
2022
  • 味の素グループにおける国別・原料別人権リスク評価実施(人権への負の影響の特定・分析・評価)
  • 「人権尊重に関するグループポリシー」「サプライヤー取引に関するグループポリシー/ガイドライン」を改定
2023
  • インドネシア(サトウキビ糖蜜サプライチェーン)における人権影響評価実施
  • ベトナム(コーヒー豆サプライチェーン)における人権影響評価実施
  • 取引先における「サプライヤー取引に関するグループポリシー/ガイドライン」順守状況調査実施
2030年に向けたロードマップ

3. 負の影響の特定・評価

「深掘性」の取り組みとして、味の素グループでは定期的に人権リスク評価およびこれに基づく人権影響評価を実施しています。この取り組みを通して把握した人権課題に対し予防や改善に向けた検討を進めています。

  • 人権リスク評価:
    味の素グループが展開する事業に基づき、原料調達・生産・販売に関わる国ごとの人権リスクを第三者の視点を取り入れながら調査、抽出(4年ごと)
  • 人権影響評価:
    人権リスク評価にて抽出されたリスクに基づき、該当する国・地域への現場訪問を行い事業に関わるステークホルダー(取引先企業従業員・地域住民などのライツホルダー、NPO等)との直接対話を通して人権への影響・課題を把握
人権リスク評価/人権影響評価 実施実績
(1)2018年度人権リスク評価/人権影響評価
①2018年度人権リスク評価

Verisk Maplecroft社人権リスクデータベースを用い、外部有識者であるCRT日本委員会の助言を得ながら人権テーマの特定と分析を実施しました。味の素グループの食品事業において、高リスクな国・地域産業を抽出したところ、タイ(水産加工・鶏肉産業)およびブラジル(コーヒー豆・サトウキビ糖蜜)が特定されました。
高リスク項目としては労働安全衛生・児童労働・強制労働等が抽出されました。

2018年度人権リスク評価の結果報告書(CRT日本員会)
②人権影響評価(ライツホルダーとの直接対話)
  • タイにおける人権影響評価(2019年)
    水産加工・鶏肉産業を中心に味の素グループのバリューチェーンに関わる製造工場や養殖場等への訪問調査、および、国際NGO や国家人権委員会、また、水産業や家禽産業の業界団体、移民労働者等に対する対話、インタビュー調査を実施。
    〈結果概要〉
    タイ国内の法制度は整備されており、鶏肉産業においては効果的な苦情処理メカニズムが機能していることが明らかとなりました。これらの好事例を味の素グループが展開する他事業・他地域へ展開すべく、取り組みを推進していきます。
  • ブラジルにおける人権影響評価(2021~2022年)
    サトウキビ・コーヒー豆産業を中心に味の素グループのバリューチェーンに関わる製造工場や農家、国際NGO や国家人権機関、業界団体等に対する対話、インタビュー調査を実施。(Covid-19の影響によりオンライン形式にて実施)
    〈結果概要〉
    当社グループの調達地域は機械化が進んでおり、人権リスクは高くないことが明らかとなりました。一方、ブラジル国内の法制度は整備されているものの、具体的な救済メカニズムは不十分であることが示唆されました。今後、この地域における救済メカニズムの構築に向けて検討を進めていきます。
(2)2022年度人権リスク評価/人権影響評価
①2022年度人権リスク評価

前回と同様にVerisk Maplecroft社の人権リスクデータとCRTによる分析により味の素グループの食品事業における高リスクな国・地域・産業を抽出したところ、東南アジア・ブラジルが特定されました。高リスク項目※1としては労働安全衛生・児童労働・現代奴隷(強制労働)・差別等が抽出されました。また、味の素グループにおける重点原材料※2別の評価において、下表に示すリスクが抽出されました。この結果を受けて外部有識者との協議を行い、味の素グループにおいて人権リスクが高い国・産業はインドネシアのサトウキビ糖蜜、およびベトナムのコーヒー豆と考えられ、当該分野での人権影響評価を進めました。

※1 評価対象としたリスク;児童労働、適正賃金、適正な労働時間、差別、結社の自由、現代奴隷、労働安全衛生、土地争奪
※2 人権に関しては重点原材料のうち下記5原料を優先してリスク評価を実施した。

2022年人権リスク評価結果(概要)
対象原料 コーヒー豆 サトウキビ糖蜜 大豆 エビ パーム油
優先課題
  • 児童労働
  • 差別
  • 適正賃金
  • 児童労働
  • 労働安全衛生
  • 現代奴隷
  • 差別
  • 労働安全衛生
  • 土地争奪
  • 現代奴隷
  • 差別
  • 適正賃金
  • 適正賃金
  • 労働安全衛生
  • 現代奴隷
対象国
  1. ブラジル
  2. ベトナム
  3. インドネシア
  1. ベトナム
  2. ブラジル
  3. インドネシア
  1. ブラジル
  2. 中国
  3. パラグアイ
  1. タイ
  2. エクアドル
  3. ベトナム
  1. マレーシア
  2. ペルー
  3. タイ

※ 重点原料の特定についてはサステナビリティレポート2023 P79を参照

②人権影響評価(ライツホルダーとの直接対話)
  • インドネシア(サトウキビ糖蜜サプライチェーン)における人権影響評価(2023年2月)
    第三者機関である人権専門家と味の素グループのサステナビリティおよび調達担当者が現地を訪問し、味の素グループのサトウキビ糖蜜サプライチェーンに関わる製造工場、トレーダー、製糖工場、農家との直接対話を行いました。
    • 味の素㈱およびインドネシア現地法人経営層への事前説明を実施(2022年11月~12月)
    • インドネシア サトウキビ糖蜜のサプライチェーン人権影響評価(2023年2月27~28日)
      • インドネシアのスラバヤ地域におけるトレーサビリティ強化の一環として、第三者機関であるCRT日本委員会と味の素グループのサステナビリティおよび調達担当者が現地を訪問。
      • 味の素グループにおけるサトウキビ糖蜜のサプライチェーンに沿った形で、味の素グループ製造工場、トレーダー、製糖工場、農家へ訪問し、直接対話を実施。
    • CRT日本委員会からの報告(2023年3月10日)
      • インドネシアにおけるサトウキビ糖蜜のサプライチェーン人権影響評価報告書案をCRT日本委員会が作成。
    • 味の素グループ内での情報共有(2023年4月)
      • 評価結果をインドネシア現地法人へフィードバック。
      • 今後の具体的な活動方針を検討開始。

    重篤な人権課題は見当たらなかったものの、適正な労働時間管理、救済メカニズム、強制労働・労働安全衛生等に関し今後も注視していきます。

  • ベトナム(コーヒー豆農園)における人権影響評価(2023年4月)
    コーヒー豆産業について現地サプライチェーンをたどり、農家や輸出業者および現地のコーヒー関連企業との対話、インタビュー調査を実施しました。
    〈結果概要〉
    今回の調査範囲において強制労働や児童労働など深刻な人権侵害は見当たりませんでした。
    一方、コーヒー豆収穫期における短期雇用労働者との契約方法や、輸出業者における労働安全衛生管理方法などについて改善すべき点が見つかりました。(対応検討中)
  • マレーシア(パーム油)における人権影響評価(2024年1月)
    現地でパーム油精製会社やパーム椰子農家、外国人労働者および認証機関等との対話、インタビュー調査を実施しました。
    ※直接的、間接的取引の有無に関わらず、マレーシアにおけるパーム油サプライチェーンを点検
    〈結果概要〉
    今回の調査範囲において強制労働や児童労働など深刻な人権侵害は見当たりませんでしたが、継続的な調査を行ってまいります。マレーシアには政府が義務化を推進する認証制度であるMalaysian Sustainable Palm Oil (MSPO)が存在しますが、農家や農家組合、認証制度を運営するマレーシアパームオイル認証評議会(MPOCC)等との対話を経て、この認証が小農家およびマレーシアのパーム油産業に関わるステークホルダーの対応力を加味し、現場の状態に則した全体的な底上げを行う目的で努力、継続的に改善していることを理解しました。

4. 負の影響の予防・是正/モニタリング・実効性評価

(1)サプライヤー・取引先との取り組み

味の素グループでは、企業の社会的責任を果たし持続可能な社会への貢献を実現するために必要な取引先への期待事項を7項目にまとめ、「サプライヤー取引に関するグループポリシー」として定めています。また、これに基づく「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」では取引先に実践いただきたい具体的なアクションをより具体的に、下記2種類の項目に分けて明示しています。

  • 【必須】:必ず取り組んでいただきたい項目
  • 【発展】:さらなる取り組みを推奨する項目

これらを通じて、味の素グループと取引関係にあるすべての企業・団体の活動を通じて人権に負の影響を引き起こしたり、助長することを回避し、万一そのような影響が生じた場合にはこれに対処します。また、たとえそのような影響を助長していない場合であっても、取引関係によって味の素グループの事業、製品、またはサービスと直接的につながっている人権への負の影響を防止または軽減するように努めます。

「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」順守状況調査

「網羅性」の取り組みとして、味の素グループでは2030年に向けてバリューチェーンにおける全ての取引先における人権への負の影響をモニタリングし、予防・是正につなげていくことを目指しています。この取り組みを通して「深掘性」の取り組みを補完し、そこで拾いきれないリスクを網羅的に抽出・把握することでバリューチェーンにおける人権リスクを最小化していきます。

取引先の全体像を把握するために2018年よりSedex※1への加入/運用を開始、さらに2022年にUNGPsに基づいた取引先への取り組み強化策の一環として「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」に基づいた独自の質問票「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」順守状況質問票(QAPS※2)を作成しました。これらを用いて、定期的に取引先におけるガバナンス・人権(強制労働、児童労働など)・労働安全衛生等のリスクを把握・抽出し、リスクの高い取引先とは対話を通じて人権課題の予防および改善に向けた支援を行います。これらのプロセスを通じて、サプライチェーンにおける人権課題の予防と是正のモニタリング・実効性評価を継続的に実施することを目指します。

※1 Sedex:Supplier Ethical Data Exchange の略。グローバル・サプライチェーンにおける労働基準、ビジネス倫理等に関するデータを提供する法人。
※2 QAPS:Questionnaire for Ajinomoto Group Shared Policy for Suppliers

「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」順守状況質問票(QAPS)について

「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」に基づく取引先への要求事項に基づき、具体的な実践の有無をアンケート形式で調査する評価表です。全86項目からなり、ILOなどのグローバル基準等で求められる人権デュー・ディリジェンスへの取り組みを網羅しています。回答内容に基づき、取引先への要求事項の実施状況を総合的に5段階で評価します。
取引先にはこの調査に回答することで自社の人権リスクについて把握いただき、是正・改善に向けた検討を促すことも目的としています。高リスクが抽出された取引先には味の素グループから対話を通じて人権課題の予防および改善に向けた支援を行います。

サプライヤー・取引先との取り組み 概要

2022年から、取引先における「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」順守状況調査を開始しました。味の素グループの事業環境を踏まえて取引先へは段階を経て調査を展開することとしました。2022年度の調査では主に食品原料と包材の一次購入先を対象としました。調査を実施した998社のうち938社から回答を得ました。(回収率92%)

〈結果〉

  • 全体概要
    53%の取引先が必須要請項目に対して十分に対応できていることが確認できました。一方で22%の取引先がリスクが高い項目について対応に改善の余地があると考えられました。
味の素グループが「必須」と定める項目に対し全て十分に対応できている。 53%
味の素グループが「必須」と定める項目に対し、一定程度対応できている。 5%
味の素グループが「必須」と定める項目の一部に改善の余地がある。 20%
味の素グループが「必須」と定める多くの項目に改善の余地がある。
もしくは「必須」と定める項目のうち、特にリスクが高いと考える項目の一部に改善の余地がある。
19%
味の素グループが「必須」と定める項目のうち、特にリスクが高いと考える項目の多くに改善の余地がある。 3%
  • 項目ごとの実施状況
    「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」要請事項の中項目に対しての実施状況では、「適切な賃金の支払い」についてはほぼ全てのお取引様で実施されていることが確認できました。一方、「適切な輸出入管理」「人権の尊重」の実施率が低いことが分かりました。

さらに、リスクが高い項目について対応に改善の余地がある22%の取引先を対象に「リスクが高い項目」への対応状況を確認しました。その結果、人権関連の「リスクが高い項目」では「人権リスクの把握」「児童労働の禁止」について特に未実施率が高いことが分かりました。

〈結果のフィードバックと改善に向けた取り組み〉

ご回答いただいたサプライヤー全社に、フィードバックとして結果概要と個社のリスク状況を示した「『サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン』順守状況調査 概要報告」を送付しました。また、2023年12月には関係する取引先に対し説明会を実施し、調査報告と共有会を実施し、意見交換を行いました。
今後、リスクが高い項目への対応に改善の余地がある取引先を対象に個社ごとの対話を実施し、是正および改善に向けた支援を実施していきます。これらの取り組みによって取引先の皆様に自社の強みや弱みをご認識いただき、弱みを改善いただくことで、ESGへの取り組みの推進に共に取り組んでまいります。

(2)外国人労働者の人権

日本国内で働く技能実習制度や特定技能の在留資格を持つ外国人労働者の受け入れに関し、味の素グループは一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)が策定した「外国人労働者の責任ある受入れに関する東京宣言2020」への賛同を表明(2020年)、さらに2021年度は、CGF社会的サステナビリティ・ワーキング・グループメンバーの一員として「外国人労働者の責任ある雇用ガイドライン」の策定に参画しました。
これに基づき、国内グループ企業で雇用している技能実習生の監理団体および特定技能外国人の登録支援団体への訪問・対話を行い、賃金の支払いや就労・生活面でのサポートが適切になされていることを確認しています。

また、国内グループ企業を中心に外国人労働者の雇用現場を定期的に訪問し、労働現場や住居環境の把握・確認、さらには外国人労働者自身や受け入れに携わる現場従業員との対話を定期的に行い、人権リスクの抽出、是正に努めています。

外国人労働者との対話

登録支援機関との対話

外国人労働者との協働の取り組み例

味の素グループ企業の一つであるデリカエース株式会社では、現在(2023年3月時点)12カ国籍、11言語の外国人従業員が働いています。外国人技能実習生や特定技能の在留資格を持つ外国人労働者も受け入れています。労働者の国籍や言語が多様になるにつれ複雑になったコミュニケーションの問題に対応するため、下記のような独自の取り組みを進め、外国人労働者の働きやすさの改善と日本における活躍推進に力を入れています。

(1)多言語翻訳システム「DAMS」および動画マニュアル「tebiki」の活用

2020年より、定期健康診断の案内など総務からのお知らせをはじめ製造ラインでの業務手順や品質・安全衛生上のポイントなどを、外国人労働者が母国語で標記された案内文やテロップ付きの動画で確認・視聴できる取り組みを開始しました。案内文や動画マニュアルは日々の業務・作業等に合わせて更新され、外国人労働者が閲覧したかどうかをシステム上で確認しています。以前は日本語(ひらがな)でのポスター掲示や口頭説明であり、伝わっていなかったこともたびたびありましたが、この取り組みにより外国人労働者の理解が深まり、やる気にもつながり業務の効率化や品質・安全衛生トラブルの抑制等につながっています。

※ DAMS: Delica Ace Multilingual System

DAMS視聴状況

(2)「ブリッジ人財」の設定 ※ブリッジ:外国人と日本人の架け橋の意

多言語翻訳システム「DAMS」および動画マニュアル「tebiki」が一方向であるために、働いてる外国人の気持ちや悩みなどを正しく知ることができませんでした。そこで2022年より双方向のコミュニケーションが図れるように、デリカエース株式会社で技能実習生として学び特定技能外国人へ転換した日本語能力やコミュニケーション能力が高い人材を「ブリッジ人財」(フィリピン、インドネシア、ミャンマーの3カ国)として任命し日本人労働者と外国人労働者の間に介在いただくことでコミュニケーションの円滑化を図っています。業務としては、タイムリーな通訳や掲示物の翻訳、教育等を行っていただいています。また月に複数回の日本人管理者との定例会議へ出席し外国人労働者の視点から困りごとや働きやすさの提言などを行ったり、滞日歴の浅いメンバーへの情報伝達や業務上の細かいフォローなども実施いただいています。また、自らが日本で暮らすにあたって苦労した経験を活かし、先輩として作業以外の役割も担っていただくことで、働くモチベーションの向上にもつながっています。

(3)携帯電話の一人一台貸与

外国人技能実習生には携帯電話を一人一台貸与し、生活上での相談や悩み事などを日本人担当者に日々相談できる仕組みを整えています。これにより、体調や生活上の悩みだけでなく住まいの問題や地域の方とのトラブルにも細やかに対応ができています。

5. 情報開示、教育・訓練

(1)グループ内での教育・研修

味の素グループでは役員や従業員、取引先の皆様を対象に、随時ビジネスと人権に関する研修や説明会を実施しています。

(2)各国の人権尊重に関する法規制への対応

味の素グループはグローバルに事業を展開していくうえで、各国で定められている人権に関する法令を遵守しています。

  • カリフォルニア州サプライチェーン透明法への対応について

味の素グループでは米国カリフォルニア州で施行されたカリフォルニア州サプライチェーン透明法[California Transparency in Supply Chains Act of 2010(CTSCA)]について、関連する現地法人より下記の声明を開示しています。

6. ステークホルダーとの対話

味の素グループでは、人権尊重の取り組みを広げ、意見をいただくため、定期的に人権専門家やステークホルダーとの対話、外部に向けた取り組み事例の共有・紹介を実施しています。

Ⅲ. 救済

1. 苦情処理メカニズム

味の素グループでは人権の負の影響から生じた被害に対し迅速かつ適切に対処するため、グループ内外に複数の相談・通報窓口を設置しています。各窓口において通報者のプライバシー厳守・保護を徹底しながら、関係部門が連携し適切な対処・解決につなげています。

内部通報ルート
ホットラインへの通報件数
2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
日本 海外 合計 日本 海外 合計
人権・ハラスメント 47 45 50 36 5 41 38 19 57
雇用・就労 21 19 36 26 34 60 14 66 80
品質・環境・安全 1 1 3 7 2 9 6 14 20
不正 1 4 3 9 4 13 2 6 8
マナー・モラル 6 10 29 22 97 119 8 54 62
適正な業務遂行 20 8 45 19 2 21 16 5 21
その他 2 6 4 8 107 115 9 213 222
合計 98 93 170 127 251 378 93 337 470
※グローバルでの集計は2021年度より実施
味の素グループホットライン

味の素グループの従業員等(正社員、パート社員、派遣社員など)および役員を対象とした内部通報の窓口です。グループ各社で働く多くの国籍の方のアクセスのしやすさを考慮し、2023年には従来の国内窓口とグローバル窓口を一本化し22言語でのアクセスが可能となりました。通報者は実名/匿名を選択することができます。味の素㈱企業行動委員会の事務局が主管し、関連組織と連携して調査・対応を行います。

サプライヤーホットライン

味の素グループでは、2018年度から取引先からの通報窓口として「サプライヤーホットライン」を設置しています。味の素グループ役員・従業員の法令違反や「味の素グループポリシー」(AGP)、「サプライヤー取引に関するグループポリシー」ならびに「サプライヤー取引に関するグループポリシーガイドライン」逸脱の疑いのある行為の早期発見と是正を図っています。

外国人労働者向けホットライン

味の素グループでは、日本における技能実習や特定技能の在留資格を持つ外国人労働者の問題解決を図るため、独立行政法人国際協力機構(JICA)を中心に、企業、弁護士、NGO等の多様なステークホルダーで作る「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」(JP-MIRAI) に2020年の設立から関与し、アドバイザリー企業として参画しています。2022年度は、JP-MIRAIが開始した「外国人労働者相談・救済パイロット事業」に参画しました。将来的にはサ プライチェーンに展開し、労働・人権問題等を早期に発見する手段の一つとして活用していく考えです。